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悪役レスラーは笑う―「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 (982))

悪役レスラーは笑う―「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 (982))

森 達也

悪役レスラーは笑う―「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 (982))

定価: ¥ 819

販売価格: ¥ 819

人気ランキング: 18299位

おすすめ度:

発売日: 2005-11

発売元: 岩波書店

発送可能時期: 通常24時間以内に発送



「硬直化した岩波新書にドロップキック!」
 『放送禁止歌』以来森さんの著作は色々追い続けてきたのですが、この人の本質はやっぱりテレビの企画マンなんだなー、と常々思います。キッチュでいかがわしいものに次々とぶつかっていき、その広がりと節操のなさ、アプローチ方法はまさにTVドキュメンタリーの姿そのものです。オウム真理教をやったと思ったら下山事件を扱い、エスパー達と行動をともにしながら色々な分野の論客と対談を行い…。そして書店の新刊コーナーにこの本が並んでいるのを見て仰天しましたよ。「昔前衛今ガリガリ保守」の岩波新書赤表紙の書き手では決してあり得ない森さん。何と今度扱ったテーマはプロレスとナショナリズム。

 予備情報なしに岩波らしい学術的に整然とした内容を期待すると「新書の体を成していない!」という怒り・不満になってしまうのも無理ないところでしょう。しかしそれを差し置いて内容は刺激的で、主人公は実は森達也その人です(これは森さんの著作全てに共通しているスタンス)。グレート東郷を触媒にして「昭和プロレス界」という魔界に足を踏み入れ、その中で自問自答しつつ精神放浪をし、人達と邂逅していく。そして「底が丸見えの底無し沼」(P237)に突き当たり不可解なままに物語が閉じる…。

 これはもはやドキュメンタリーではなくなっています。私はいつも「現実の日本を闊歩するF.マーローなのだ」と思っています。だからゴシップ的に裏プロレス史を縦断していきますが、正統的なプロレス史にはなり得ません。あくまで森さんの視線=ドキュメントなのです。だからグレート草津との対談(これは絶品で本書の白眉です)の中で、この手の本では全くの蛇足に等しい「焼酎を飲むディテール」を執拗に記述する訳です。帯にある香山リカさんの言葉をもじれば「硬直化した岩波新書にドロップキック!」です。現実の割り切れなさをそのままに。それが森さんの誠意です。面白さは絶対保証です。

謎解きの過程を楽しみたい方にお勧め
まずこの人の作品のほとんどは解答の出ないまま終わるので(というよりノンフィクションの宿命ですが)、はっきりとした真実を求める方は読まない方がいいです。

基本的にこの人は曖昧なものは曖昧なまま終わらせます。

逆に謎解きの過程を楽しみたい方にはお勧めします。私はこういう私小説的ノンフィクションが好きなので、評価は高いです。あと単純にこんな人がいたんだ、こんな世界があるんだというトリビア的驚きも楽しめます。



プロレス思い出した
グレート東郷という人は、「卑劣なジャップ」という試合スタイルですごい数の観客を動員したと知りました。超大物悪役レスラーの出自を追って話はすすみ、社会に実在する不公正を間接的に描いている好著だと思いました。

子供のころに聞いた「レフェリー おきー しきなー」というアナウンスを思い出し、懐かしく思いました。



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